院内ブログ

橈尺骨骨折整復術|前足の骨折について

,

橈尺骨とは、手首から肘の間にある2本の骨のことです。
親指側の太い骨を橈骨、小指側の細い骨を尺骨といい、2つ合わせて橈尺骨と呼びます。
橈尺骨の骨折は犬の骨折の中で最も頻度が高く、特に骨の細い小型犬(トイプードル・チワワ・ポメラニアンなど)に多発します⚠️
原因は高所からの落下がダントツで多く、抱っこしていて落としてしまったり、椅子やベッドから飛び降りてしまうことで発生します。

参考:人の橈尺骨のイラスト。犬猫も橈尺骨の位置関係は同じです。

治療法
橈尺骨骨折の治療法には様々な方法が議論されてきました。その中で外固定(ギプス)や髄内ピン(骨の中にピンを通して固定する)では癒合不全や変形癒合が多く報告され、現在では典型的骨折例にはプレート法の適用が一般的になっています。プレート法はステンレス製orチタン製のプレートを、骨折部位にスクリューを用いて固定する方法です。しっかりと固定できるため、術後すぐにリハビリを開始できます。しかし骨の太さにあった適切なプレートの選択や、再骨折を招かないようにスクリューを挿入しなければならないなど、難易度の高い手術でもあります。手術は橈骨のみに行い、尺骨は自然癒合が可能です。

症例
今回の患者さんはMIX犬(マルチーズ×トイプードル)、1歳の男の子です。
飼い主さんの抱っこから飛び降りてしまい、左前足をつけなくなったということで来院されました。レントゲンを撮影すると橈尺骨の骨折が確認でき、飼い主様と相談の上プレート法による手術を行うことになりました。

赤丸内が骨折部位です。
別アングル:左前足を横から撮影しています。こちらから見ても2本の骨が完全に折れているのが分かります。

プレート法による整復術
※手術の写真があります

まずは切皮し、筋肉をよけて骨折部位を確認します。

黄色い円の中心部が骨折端です。
折れた骨の断端がそれぞれ確認できます。

骨折部位にプレートを設置し、スクリューで固定します。
下の写真がプレート固定をしたところです。上下に2本ずつスクリューが入っているのが分かります。

プレート固定後は縫合して終了です。
術後は3日間ほど入院し、経過が順調だったため退院となりました😊✨

退院後の診察
退院から1週間後に、抜糸のため来院されました🍀
傷口はとても綺麗で、問題なく抜糸を行うことができました👌

傷口の様子。腫れや化膿もなく、綺麗です。

またプレートの様子や手術部位の状態を確認するためにレントゲンを撮りました。プレートのずれや再骨折もなく、経過は良好です😊

プレートが固定されている様子。
隣の細い骨が尺骨です。よく見ると癒合のための仮骨形成が始まっています。

さらに10日後の診察
次の診察では、橈骨の骨折線がほぼわからない状態になっていました!

前回見えていたプレートの下の骨折線が分からなくなっています。
また、尺骨はさらに癒合が進んでいます。

順調に骨の修復が進んでいるようで一安心です🍀

今後も定期的な診察とリハビリを行い、機能回復を目指して治療を行っているところです🙌
この子は1週間~10日に1度院内でのリハビリを行い、ご自宅でもリハビリを頑張ってもらっています✨

まとめ
橈尺骨骨折はトイ犬種や仔犬に頻発するケガです😥骨折は早急な治療が重要であり、骨折と気が付かずに自宅で様子見をしてしまうと、変形癒合や癒合不全の原因となってしまいます💦
高所からの落下や、体を触ると痛がる、歩き方がおかしいなどの症状がある方は、あまり様子を見ずにできるだけ早く病院へご相談ください🍀